「異常」であるということ
ずっとずっとずーっとこうやって、
幼い頃から、自傷なんて言葉も知らずに自らを傷つけ、
お風呂がないことも、服も食事も少ないことも、
中学からお金を稼いで、知らない畑から捨てられた野菜を拾うことも、
近くの公園のトイレに行くことも、寂しくて苦しいのも、
ここで育った私にとってはそれが全て「当たり前の普通の家」だったのだ。
私に「それは異常だ」と言った人が現れてから、それは『異常なもの』だとされ、
異常だと知ってから、私は人間社会の少数者として生きることになって、
それでも就職し働いて、全てを失い、絶望のど真ん中に居て…
昔の地獄を知らない、地獄とされる場所に住む私のままで居たかったと、思う。
病気と診断されて、初めて「身体の痛み」を感じた。認識したのさ。
初めて「身体内部の違和感や痛み」も知ったんだ。
今まで、きっと私は頭痛も吐き気も風邪も病気もずっと多分知らなかった。
知らないままで良かった。
他の家も羨ましくなかった。
それでも『異常』と知り、欲を知り、欲しがるようになってしまった私の責任は誰がとってくれるんだろう。
誰もとれないと分かっていて、そんなことは分かっているのだけれど、
何故そんな残酷なことを私にしてくれたのだろうと、何度も何度も考えている。
私はずっと死にたかったけれど、何故それを悲しそうに異常だと言って、おかしいと笑うんだ。
生きていて良かったとは思えない地獄で生きてはいたけれど、
今の状況の方が実はもっともっと苦しい。
最初からずっと死にたいために生きていたのに。